2017年 03月 02日
Guilloche Enamel |
左:20世紀初頭、カルティエ、ペンダントウォッチ。
ダイヤモンド、シルバー&ゴールド、エナメル
右:1910年代、ROLEX、リストウォッチ
地模様が透けてみえるエナメルこのエレガントな時計は、ギロシェ・エナメルを施したペンダントウォッチとリストウォッチ。この上もなくエレガントな逸品。
ギロシェ・エナメルとは、地金に模様を彫りその上に釉薬をかけて高熱で焼成しガラス質にする技法で作られたエナメルを指します。つまり、エナメルというのはガラス質であるがために、衝撃に弱く繊細で壊れやすいことからコンディションの良いものが少なく、その希少性に拍車が掛かっています。
18世紀には金属板に手彫りで掘られていたものが、19世紀末にターン・エンジンという機械が開発され、20世紀初頭にかけてこの技法のアイテム(生活用具を含む)やジュエリー、時計等が多く作られるようになりました。
カルティエやインペリアルイースターエッグで有名なファベルジュも、数多くの作品を残しています。
右のロレックスは、ロレックスの中でも珍しい作品。
これは20代半ばに、それこそ店先で恋に落ちて即決で購入に至った作品。
リストウォッチの始まりは、懐中時計を小さく小さく作り、リストバンドを取り付けたことからはじまります。ですから、このようにまん丸の形で作られた時計は、アンティークウォッチの中でも古い時代のものと判別できます。
地模様が透けて見え、うっとりとする美しさ。
若かりし頃の私のトレードマーク。
左のカルティエは、それこそご縁あってのお品。
こんなに美しいジュエリーが、1年以上もお店のウィンドウに飾られ、残されたまま。勿論、カルティエということもあり、そういう価格だったこともありますが、こんなに美しいものが多くの人の目を逃れて売れずにいたなんて!
実はこのポケットウォッチ(エナメルの反対側が文字盤)、時計が壊れているのですが、修理をしようにもエナメルを傷めてしまう可能性があり、イギリスでもフランスでも職人さんに修理を断られたのだとか。通常のスタイルだと、文字盤側に薄い薄い隙間(紙1~2枚入るぐらい)があり、蓋を開閉して、時計が収められているケースの内側を触れるのですが、このペンダントウォッチはなんと表側のエナメルの側に、開閉できる箇所が作られているのです。下の画像の向かって右側、ちょうど3時の位置に僅かな隙間があり、ここに極々薄い金属板を差し込んで開閉するのですが、古いエナメル細工ゆえに、蓋を開ける時の負荷でエナメルに傷をつけないとも限らない・・・・・・と、職人達が危惧しているのだそう。
ファベルジェやカルティエ等のジュエラーは、
それぞれにエナメルのオリジナルの色見本サンプルを持ち、
何十色もの微妙な色調のエナメルを作り出していました
エナメルも何度も重ね塗りをしたり、下地に異なる色を塗っていたようです
このエナメルも光の当たり方や角度によって、下地の色が透けて見え
単なるピンク、に終わらない深みを湛えています
これまた、店先で恋に落ちた私は今回ばかりは即決とはいきませんでしたが、今、私の最愛コレクションとなっています。
中央のローズカットのダイヤモンドはピンク色に見えますが、実際には無色のダイヤモンド。エナメルの上にセットしているから、ピンクに見えているようです。(ダイヤを真横から見ると透明なので、フォイルバックかエナメルの上に置かれていることが分ります)
こちらの購入は30代後半、40手前の頃だったでしょうか・・・。
ギロッシェ・エナメルの他にも多様なエナメル技法があり、どれも魅力的なジュエリーが今の時代に残されていますが、ギロッシェ・エナメルの、それもハイクオリティな作品だけはどうしても見過ごすことができないのです。
by cloisterof
| 2017-03-02 08:00
| A to Z